野口記念奨励賞

放射性同位元素標識法を用いた脱硫触媒の構造および反応機構の解析

銭 衛華殿(東京農工大学工学部 助手)

 地球環境保全の一環として自動車用燃料油に対する品質規制が年々厳しくなり,特に軽油中に含まれる硫黄分の低減化が緊急の課題となっている。銭氏は,放射性同位元素標識法を用いた深度脱硫触媒の構造解析および脱硫反応機構の解析に取り組み,以下に示す多くの成果を挙げ,軽油深度脱硫技術の発展に貢献している。

 第一は,軽油中の難脱硫性化合物であるジベンゾチオフェン(以下,DBT)を放射性同位元素35Sで標識した35S-DBTの水素化脱硫反応を実際の水素化脱硫反応条件下で行い,モリブデン系触媒の作動状態での脱硫反応機構を明らかにした。すなわち,

(1) DBT中の硫黄はただちに硫化水素として放出するのでなく,触媒上にいったん保持された後,放出されることを見い出した。
(2) 触媒上に取り込まれた硫黄の中でも反応に関与しない硫黄と,関与する硫黄が存在することを明らかにし,その関与する硫黄を活性点とし,従来困難とされていた反応中における活性点を定量化することに成功した。
(3) また,35Sで標識した硫化水素を用いて,触媒の硫化機構を定量的に解析した。その結果,主活性金属であるモリブデンは低温から硫化が進行するのに対し,助触媒であるコバルトやニッケルは高温領域で進行することを明らかにした。

 第二は,放射性3Hで標識した気相水素を用い,水素化活性の高いタングステン系および貴金属触媒による水素化反応を行い,水素の挙動を定量的に解析することで,水素化反応機構を明らかにするとともに,貴金属触媒における硫黄の被毒機構を明らかにした。

 以上の研究成果は,銭氏の最近の研究成果に基づくもので,従来の研究には見られない独創的な手法を用いて数多くの新規かつ重要な知見を見い出している。これらの研究は軽油の超深度脱硫技術を開発する上で極めて重要な基礎研究であり,わが国のクリーン燃料の開発に多大な貢献をしていると判断される。よって,本会野口記念賞表彰規程第2条2項に該当するものと認められる。

 
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