論文賞

ギ酸脱水素酵素と亜鉛ポルフィリンを用いた可視光による炭酸水素イオンからのギ酸合成反応

宮谷 理恵殿+1),天尾 豊殿(大分大学)

 二酸化炭素を原料とした有機合成プロセスの確立は重要課題である。本研究では,可視光エネルギーと酵素反応とを駆動力とし二酸化炭素を原料とした有機合成プロセスの確立を目指し,ギ酸脱水素酵素による炭酸水素イオンのギ酸への変換反応と水溶性亜鉛ポルフィリンの光増感作用によるメチルビオローゲンの光還元反応とを組み合わせた可視光によるギ酸合成系を構築している。具体的には,電子供与体であるトリエタノールアミン,亜鉛テトラキス(4-メチルピリジル)ポルフィリン,メチルビオローゲンおよびギ酸脱水素酵素からなる系を用いている。この反応系では,水中に二酸化炭素が溶解していることを想定し,気体の二酸化炭素の代わりに炭酸水素ナトリウムを原料としている。反応系にタングステンランプからの可視光を照射すると光照射時間とともに定常的にギ酸が生成することを見出している。さらに,反応条件を最適化することにより,ギ酸生成量を大幅に増加することに成功している。生成量の向上にさらなる努力を必要とするが,新しい反応系を見出している点は高く評価できる。

 本論文は,ギ酸脱水素酵素と亜鉛ポルフィリンを用いることで,可視光による炭酸水素イオンからのギ酸合成反応系の構築に成功しているものであり,今後の二酸化炭素を原料とした有機合成プロセスの確立に向けての有意義な基礎研究となっている。

 以上の点から,本論文は本会表彰規程第6条に該当するものと認められる。

 

[対象論文] J. Jpn. Petrol. Inst., 47,(1), 27(2004).
+1)(現在)キリンビール(株)

 

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