奨励賞（学術部門）

燃料アンモニア燃焼銅系触媒の開発

　

　日隈氏は，カーボンフリーの石油代替燃料として注目を集めているアンモニアの燃焼に用いる触媒の研究開発に取り組み，優れた業績を挙げてきた。この反応系の課題であるアンモニア燃焼温度の低下，副生成物の抑制により窒素選択性の向上に成功し，また活性点の構造や反応機構を解明するとともにハニカムコート触媒の開発にも成功した。
　具体的には，汎用金属の酸化物であるCuO_x をAl₂O₃に担持した触媒（CuO_x /Al₂O₃）が高い窒素選択性を示すことを見出した。この触媒では，固相反応によって形成された微細なCuAl₂O₄粒子が低温でのアンモニア燃焼活性に優れることを明らかにした。そして，アンモニアとCuAl₂O₄粒子の格子酸素とが反応するMars-van Krevelen機構でアンモニア燃焼が進行することを提案した。さらに，日隈氏はCuO_x /Al₂O₃にAgを複合化するとアンモニア燃焼活性が向上することを見出した。そして，その調製法について検討し，Ag，CuO_x の順に逐次担持した触媒が，低温でのアンモニア燃焼活性と窒素選択性に優れることを見出した。また，XAFSを用いた触媒の局所構造解析により，反応中にはCuAl₂O₄とAgナノ粒子が存在すること，より高分散なAgナノ粒子が低温でのアンモニア燃焼を促進することを明らかにした。この触媒では，NH₃からNHへの解離吸着が起こらないため，亜酸化窒素の生成が抑制され窒素の選択率が高くなることも提案した。さらに，これらを工業的手法としてコーディライトハニカムにウォッシュコートすることで，粒状触媒と同等の優れたアンモニア燃焼活性と窒素選択性を示す触媒の開発に成功した。
　以上の研究成果は，汎用金属の酸化物を主たる活性成分とする触媒での活性点構造の設計や，実用化を志向したハニカムコート触媒の調製に明確な指針を与えるものであり，環境・エネルギー分野で重要な触媒プロセスの発展，クリーン燃料アンモニアの導入に大いに寄与するものである。よって，本会表彰規程第12条1項に該当するものと認められる。

 

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