石油学会会長メッセージ

松下 隆

松下 敬
(出光興産(株) 取締役副社長執行役員)


 このたび,石油学会の会長を拝命いたしました出光興産の松下でございます。会長就任にあたりましてご挨拶申し上げます。
 まず,今般の新型コロナウイルス感染症によりご苦労されている皆さまに心からお見舞い申し上げます。また,この難局に立ち向かっている医療機関,学協会,産業界の皆さまに心から敬意と感謝の気持ちを表します。
 新型コロナウイルスの感染拡大による石油需要の大幅減少と時を同じくして起きた主要産油国の減産合意不成立による原油価格の急落,それらによる世界経済のダメージは甚大でありその回復の道筋は不透明なままです。
 あわせて,環境意識の高まりによる脱炭素化や脱プラスチック化の流れなど,石油を取り巻く環境の変化は,事業そのもののあり方に大きく影響を及ぼそうとしています。
 エネルギー源としての石油は,高いエネルギー密度を持つことに加え,可搬性(持ち運びやすさ),貯蔵性,分散性が高く,ほかのエネルギーに比べ優位にあります。自動車・船舶・航空機などの輸送機器,工場・家庭など日々の暮らしのエネルギー源となっているとともに,自然災害時のエネルギー供給源としても重要な役割を担っています。また,経済産業省による「長期エネルギー需給見通し」では,石油は引き続き重要なエネルギー源と位置づけられ,今後も,石油・石油化学製品の生産において,新規技術の導入,技術の伝承が求められています。
 一方,「パリ協定」では,世界全体で今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出量と吸収源による除去量との均衡を達成することを目指すとしており,世界的に脱炭素化への動きが加速されています。省エネルギー技術,再生可能エネルギー技術,環境技術において先進国であるわが国においては,技術のさらなる向上を進めていかなければなりません。石油の利用に伴うCO2の排出を大幅に削減していくためには,CO2を炭素資源(カーボン)と捉え,これを回収し,多様な炭素化合物として再利用(リサイクル)するカーボンリサイクルの研究開発も求められています。
 昨今,技術課題を早期に解決するためには,産・官・学など,あらゆる分野の研究者,技術者の協働からイノベーションを起こすことが期待されています。石油学会には「石油」をキーワードに多くの研究者,技術者が集まっており,これまで以上に交流を深めていくことを期待しています。
 また,カーボンリサイクルなどの新たな研究・技術分野,イノベーションを推進するためにAI・IoTなどのデジタル技術分野への取り組み,国内外の他学協会,他団体との協力・協業なども視野に入れていく必要があります。
 そして,若い世代の人たちが将来のエネルギー関連の研究・技術開発を担えるよう,石油学会が幅広い技術領域の研究者,技術者が集うプラットフォームとしての役割を果たし,あわせて広く世間に正しい知識,理論の情報発信拠点となることが重要であると考えています。

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