奨励賞(出光興産賞)

界面活性剤を用いたボトムアップ型金属酸化物ナノシート触媒の合成

 

中川 敬三 殿(神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科 准教授)

 中川氏は,界面活性剤を鋳型や表面修飾剤として用いたボトムアップ法による金属酸化物ナノシート触媒の合成に関して,優れた業績を挙げてきた。
 中川氏は,アミン系界面活性剤存在下でのチタンアルコキシドの加水分解・重縮合反応により,界面活性剤層とチタン酸ナノシート層からなるラメラ構造体を合成した。正に帯電した界面活性剤のラメラ相が鋳型として働くと同時に,負に帯電したチタン酸ナノシートと静電相互作用して交互積層するメカニズムを提案した。チタン酸ナノシート表面が界面活性剤で修飾されることによって,従来のナノシートと比較して可視光領域の光吸収率が高まり,さらに疎水性有機化合物に対する吸着特性が高まることを明らかにした。これらの特徴を利用して,可視光による有機色素(ローダミンB)の効率的な光分解が可能であることを示した。
 さらに中川氏は,界面活性剤の修飾作用を利用して,ニオブアルコキシドを原料とした単層ニオブ酸ナノシートの水熱合成にも成功した。層状化合物を単層剥離する従来の手法とは異なり剥離剤を利用しないため,ナノシート表面での反応性が向上し,紫外光照射下における水/メタノール溶液の光分解において,従来の剥離ナノシートよりも高い水素生成活性を示すことを明らかにした。また,単層ニオブ酸ナノシートを同様の二次元ナノ材料である酸化グラフェンやMoS2と複合化させることで高機能界面を形成し,貴金属を助触媒として使用することなく水素生成活性を飛躍的に向上させることにも成功した。さらに,単層ニオブ酸ナノシートを積層した薄膜が高い透水性能と分離性能を示すことを見出し,ナノシート型メンブレンリアクターの開発に道を開いた。
 以上のように中川氏の研究成果は,独自の二次元金属酸化物ナノシート合成手法の開発とともに,その特徴を活用し優れた特性を有する二次元金属酸化物ナノシート触媒の設計指針を示したという点で,学術面のみならず応用面でも高く評価される。
 よって,同氏の本業績は本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。

 

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