石油豆知識[アスファルト]

石油製品の自動酸化 石油アスファルト
および改質アスファルト
石油豆知識
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石油製品の自動酸化

 石油製品の自動酸化とは,液状石油製品を長時間貯蔵あるいは使用すると, 酸素と反応して色相変化と同時に黒褐色のガム物質を生成する反応である。 この酸化反応は一度進行するとフリーラジカルにより自動・連鎖的に進むので,自動酸化と呼んでいる。
 オレフィンを含むガソリンの劣化,飛行中高温の翼を冷却する際のジェット燃料の劣化,太陽光による白灯油の着色, エンジン油の劣化,タービン油の劣化のほか,新聞紙の黄色変化も紙にしみ込んだ油分の自動酸化である。
 自動酸化は,石油からの水素引き抜き反応から始まる。したがって,第三級水素が最も取られやすく,第二級,第一級の順になる。 オレフィンやテトラリンの第三級あるいは第二級水素は容易に取れて,酸素と反応し,パーオキサイドを経て自動酸化反応が進行する。 この反応は分子構造のほか,触媒の存在や温度が高いほど,光が強いほど早く進行する。
 石油製品はおのおのの使用条件に応じて,変質が少なく安定であることが要求される。 この安定度を評価するため,JIS規格では10種ほどの酸化安定性の試験がある。
 酸化条件としては95〜200℃の温度領域で,温度の低い領域では加圧酸素を用いたり,1000時間といった長時間の試験がある。 また,潤滑油の場合,短時問で評価するために酸化条件を厳しくする必要があり,銅板や銅線等を入れ酸化反応を促進させて試験を行う。
 自動酸化の防止に,フェノール系やアミン系などの酸化防止剤を添加するが,ラジカルと反応した分は順次その機能を失うので, 永久効果は望めない。また,パーオキサイドを分解して酸化反応を抑制するサルファイド系酸化防止剤もある。 石油中の硫黄化合物の一部にもこれに類する成分がある。
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石油アスファルトおよび改質アスファルト

 石油アスファルトはJIS規格により,道路舗装用ならびに工業用のストレートアスファルト(以下スト・アス) と少し硬めのブローンアスファルトおよび防水工事用アスファルトの3種類に分類され, さらにそれぞれ針入度ならびに軟化点により細かく分かれる。
 スト・アスは重質原油を常圧・減圧蒸留装置にかけて得られ,沸点が400〜550℃以上の留分であり,分子量は350以上を有している。
 ブローンアスファルトはこのスト・アスにリン系の触媒を加えて,常圧下,250〜300℃で空気を吹き込むことにより, 酸化脱水素・重縮合反応を起こさせ,硬くすると同時に感温性を小さくしたもので,防水工事用に使用される。
アスファルトのJlS規格は針入度ならびに軟化点のほか,トルエン可溶分,引火点,密度 (例:スト・アスの場合,密度1.000 g/cm3以上)などで規定されている。
 上記のほか,最近スチレン・ブタジエンゴムやスチレン・ブタジエンブロック共重合体等のゴム・ 熱可塑性エラストマーをアスファルトに混ぜた高品質の“改質アスファルト”の消費が伸びており, 特にこの10年間の伸び率が大きい*。日本改質アスファルト協会の代表品質規格として耐流動・ 摩耗性の優れた改質アスファルトI型,同II型,および排水・透水性用の高粘度改質アスファルトの3種類があり,軟化点, タフネス(把握力)・テナシティー(粘結力)試験,60℃粘度など粘度特性を中心に規格が設けられている。
 都市部の道路舗装は「雨水を地下に円滑に浸透させる」ことのできる構造(透水性舗装) および高速道路の安全運転と低騒音効果がある排水性舗装が環境対応のため急速に普及しており, これに使われる高粘度改質型は年率30%前後で伸びている。
 2000年度の統計では,改質アスファルトは舗装用アスファルトの11%に相当する38万tが出荷され,内訳は改質T型21%, 同U型44%,および高粘度改質型33%である。
 (注)* 井町弘光,石油製品討論会予稿集,石油学会,東京(2001),p.91.
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